アドバンス助産師の活躍

第7回 風間 仁美様
(東京北医療センター師長)

はじめに、自己紹介をお願いいたします。

高校卒業まで宮崎県で過ごし、千葉県の短期大学で看護師資格を取得後、都内の助産師学校で助産師資格を取得し、20年になります。
その間、大学編入や大学院修士課程で学んだ時期もありました。そこでの恩師や友人との出会い、多くの学びや経験は今の助産師としての自分に大きな影響を与えていると思います。
今は、夫と小学校1年生、2年生の二人の子供の協力のもと、師長として仕事に励んでいます。アドバンス助産師は2016年に取得しました。

勤務先のことを教えていただけますか。

当院は、東京の北部、埼玉県との県境に位置する病床数343床、31診療科を有する総合病院です。

「地域に根差した医療を実践し、その人の人生を豊かにできる医療人を育成することで、社会に貢献していきます」という理念のもと、地域の急性期医療を担うべく診療を行っています。また、災害拠点病院、地域医療支援病院に指定されています。病院として、へき地・離島等への医療支援にも積極的に取り組んでおり、助産師の不足している地方病院への助産師派遣や離島からの分娩受け入れを行っています。

産婦人科病棟は、病床数41床、LDR5床を有する産科単科の病棟です。産婦人科外来との一元化により妊娠期から出産後までの継続的看護を目指し、46名の助産師が日々の助産ケアにあたっています。2016年にはNICUがオープンし、ハイリスク症例が増えつつあります。2018年度は1,091件の分娩がありました。

昨今、分娩施設の混合病棟化が問題になっていますが、幸いにも当院は今のところ産科単科で運営を行うことができています。これからも産科単科を維持するために、「出産場所に選ばれる魅力ある病院」を目指して助産師が主体となり様々なことに取り組んでいます。

今年度は、「立ち会い出産の対象拡大」「産後同窓会」「母児早期接触」「ママの沐浴実施」「入院妊婦さんのランチ会」「産後の夜食提供」などを計画し、助産師がグループに分かれて取り組んでいます。

普段のお仕事の様子はいかがですか。

産婦人科外来と産科病棟の一元化をしていますので、病棟・外来の管理が主な仕事です。病棟運営の方針を決めてPDCAを行うこと、管理的なデータの収集や分析、スタッフとの定期的な面談や助産師の教育計画の作成、高額医療機器から日用品まで病棟・外来で使用する全ての物の管理・購入計画等々、業務の内容は多岐に渡ります。

 患者様と直接かかわる機会は少ないですが、他機関・他職種との連携が必要な方に関しては直接面談を行い、必要な支援を考え、関係職種・機関との調整を行います。精神科疾患を抱えた方や経済的不安のある方、家庭環境の複雑な方、パートナーからDVを受けている方など様々な背景により支援を必要とする方がいらっしゃいます。産婦人科の医師はもちろんですが、小児科の医師や師長、MSW、地域の保健センター、精神科連携病院などと情報共有を行い、必要時、面談などの調整を行っています。

 また、分娩施設を検討中の方に当院産婦人科について知っていただくため、病棟見学会を行っています。実際の施設を見てもらい、イメージを持っていただくことはもちろんですが、施設までの距離や綺麗さという外見だけでなく、当院における妊娠管理や分娩の方針に対しても共感していただいた上で分娩施設として選んでいただきたいという思いで毎回、お話をしています。

これまでに受けた研修の中で、特に日々の業務に役立っていると感じる研修はどんなものでしょうか。
または、今後受講していきたい研修があれば教えてください。

看護協会主催の産科管理者研修は産科の管理をする上で旬なテーマが取り上げられる事が多く、また、産科の管理者という同じ立場の助産師と話のできる貴重な機会でもあり、毎回受講をしています。

 師長という役職柄、平日は休みが取りづらく、参加できる研修が土日に限られがちです。そのため、オンデマンドで受講できる研修は電車通勤の往復時間を使って受講することができ、積極的に利用しています。

 また、病棟運営を行っていくうえで、医療に関する政策や制度、医療経済に関する動向に目を向ける事が必要ですが、疎い領域でもあるため、学ぶ機会を作っていきたいと思っています。

助産師を目指した理由やきっかけはどんなことでしたか。

一番のきっかけは母性看護の実習です。
 分娩に立ち会った時の感動と命の誕生の瞬間を共にする助産師という職業を間近に見て、自分もなりたいと思った事がきっかけです。産科病棟の明るくて穏やかな雰囲気も看護の実習の中では印象的で、こんな場所で働きたいと思ったことを思い出します。

この仕事の難しさを教えてください。

正解がないところだと思います。
 「あともう少し頑張ったら母乳でいけそうだけど・・・」「精神科を受診したら楽になるかもしれないのに・・・」「パートナーと離れたら危険な目に遭わずに済むのに・・・」など、助産師としてこれが「正解」と思うことも、相手にとっては必ずしもそれが「正解」ではないということがあります。

 相手の抱える多様な背景や置かれた状況の中で、その人にとって、いま最も「Best」なのはどうあることか、決まった答えがないだけに難しさを感じます。

この仕事の良いところを教えてください。

病院で唯一「おめでとうございます」「また来てくださいね」と言える場所であること、新しい家族のスタート、未来にかかわることのできる職業であることだと思います。

 当院はリピーターの分娩の方も多く、勤務年数が長くなるにつれ、「上の子の出産の時にお世話になりました」とか「前回お世話になった時には主任さんでしたよね」とか、声をかけていただくことがあります。何年も前の退院指導で話した些細なことを覚えていてくださった方もいました。何年経っても覚えていてもらえるというのは助産師として嬉しく思います。

助産師になってより磨かれた部分、得意になったことはどんなことでしょうか。

先を考える、想像する力でしょうか。

 分娩経過の中で、様々な情報から予測を立て、ケアを行うことはもちろんですが、妊娠中から分娩のことを考え、さらに出産後の生活の事を考えて必要な支援をする。また、家族背景や生育歴など得た情報からその人の生活を想像して、これから先の生活の中で必要な事を考える。かかわりの中で常に先を考えること、その人の生活をイメージすること、そこから今必要な支援を考えるといった思考は助産師になって、年数を経ることで身に付いてきたと思います。

最後に、アドバンス助産師としての抱負や、これからアドバンス助産師を目指す方へのアドバイスをお願いします。

2021年度がアドバンス助産師の更新年となります。管理職であると同時に、一助産師として「自律して助産ケアを提供できる実践能力」を持ち続けられるよう、知識と技術のブラッシュアップを行っていきたいと思います。  また、師長としては、数多くのアドバンス助産師を生み出せるよう、CLoCMiPに基づいた助産師教育を行っていきたいと思います。

ご協力ありがとうございました。