アドバンス助産師の活躍

第8回 藤井 宏子様
(公立大学法人県立広島大学准教授)

はじめに、自己紹介をお願いいたします。

県立広島大学助産学専攻科で教員をしております,藤井宏子と申します。アドバンス助産師は2016年に取得しました。尾道市出身で,職場から自分の生まれた島が見えます。

勤務先について教えていただけますか。

大学での職務は教育・研究・地域貢献といわれますが,本学助産学専攻科の教員は総じて教育をはじめ,学生と過ごす時間が長いと思います。どの教員の研究室にも学生がよく出入りします。学習上の質問や進路相談はもちろんですが,つらいことがあった時にも研究室にやってきます。

助産学教員になった経緯を教えてください。

広島市内の総合周産期母子医療センターで10年近く勤務する中で,職場では解決できない問題意識をもったことから大学院に進学しました。職場に愛着もありましたし,ずっと臨床にいるものだと思っていました。教員という職業は遠い向こう側だと思っていましたが,指導教員に勧められたことをきっかけに教員になりました。博士課程を修了したら臨床に戻るつもりでしたが,教員になってみると助産師をめざす学生はとてもかわいく,仕事上の子どもをもったようでした。結局,教員として現在に至ります。

ご専門の研究テーマについて教えてください。

「職業生活に適応するためには何が必要なのか」という問題意識のもと,社会化やワーク・ライフ・バランス,職場無作法の研究をしています。助産師になるまでの時間的・金銭的コストを考えると助産師個人にとって適応状態にある方が幸せだと思いますし,助産師1人を育てるコストを考えると潜在化や離職は社会からみても損失だと思うからです。

これからの助産師に特に求められている技術・知識はどんなものでしょうか。

日本の周産期医療の水準はこんなに高いのに,地域で母子とその家族には課題が山積しています。どのようにすれば助産師が地域での助産を担えるのか,貢献できるための仕組みを考え実践に移すための知識や実践力,行動力が必要だと思います。助産師出向支援制度もありますが,もっと持続的に助産師が地域で力を発揮できる仕組みが必要だと思います。

学生を指導する上で気をつけていらっしゃることはありますか。

最新の知識や技術を習得することも大事ですが,10年後20年後も変わらない,助産師としての志を抱かせて修了させてあげたいと思います。学生も臨地の助産師と同様に対象者を主語で話せること,対象者の権利・安全を守るために自身のアセスメントを指導者さんに報告し,相談しながら調整することが大事だと思います。これに関しては本学教員,臨地実習指導者が口を揃えて学生に言っていることです。幸いなことに,本学の臨地実習先は臨地実習指導者さんをはじめ,スタッフの方々が学生の良きモデルとなってくださいますので,教員はそれを言語化し学生に伝え内在化できるよう心がけています。

大学でのお仕事の他に、助産に関するご活動をされていらっしゃいますか。それはどういったことでしょうか。

特別な背景はなくても,新生児がいるご家庭では家事・育児が大変です。最近,広島県内の小売業と開業助産師さんが協働する産後サポートをコーディネートし,事業化しているところです。そのほか,全国助産師教育協議会や広島県看護協会での教育,広島県の助産に関する仕事をさせていただいています。

助産実践能力のブラッシュアップのためにしていることや、今後受講したい研修などはありますか。

教員は臨地での実践に制限がありますが,実践能力が衰えると学生にも臨地にも迷惑をかけ,ひいては対象者の不利益にもつながります。臨地で必要とされる実践に関する研修は引き続き受講したいです。さらに今後は地域での母子とその家族の課題に関する研修も受講していきたいと思います。また教員として,教育方法や評価,教育機関の運営や行政との連携に関する研修も受講していきたいと考えています。

教員としてお仕事をされていて、どんなときにやりがいや喜びがありますか。

助産学生の教育はまるで子育てのようです。彼女たちが大きくなり,社会で活躍し,世の中のどこかに役に立っていると思えば,いつでも喜びを持つことができます。今はまだやりがいよりも使命感や義務感の方が大きいです。大きな喜びや達成感,心に残るエピソードを想うのはしばらく先まで大事にとっておこうと思います。

最後に、アドバンス助産師としての抱負や、これからアドバンス助産師を目指す方へのアドバイスをお願いします。

外部評価の認証によりアドバンス助産師の称号が与えられることはとても有意味だと思います。自画自賛ではないからです。今は教員で直接的な助産実践はなかなか難しいのですが,助産師として対象者さんや学生に接することができるよう,更新し続けようと思います。

ご協力ありがとうございました。