Vol.15
2024.07.10
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【特集:アドバンス助産師を可視化する】
出産費用の見える化。そしてその後。出産費用の見える化の動きは、今後、何をもたらすのでしょうか。見える化推進の背景と動向について解説していただきます。
公益社団法人日本助産師会 副会長
中根 直子
本年5月30日、厚生労働省のHP上に分娩情報提供WEBサイト「出産なび」が公開されました1)。全国で出産を扱う病院、診療所、助産所まで、2000以上、約95%の施設が任意で参加しています。機能の異なる全国の出産施設が同じフォーマットで検索可能なだけでなく、施設それぞれのHPにもリンクされて細かい情報提供にも対応できることから、妊産婦さんの利便性は非常に向上したといえるでしょう1)。

厚生労働省による分娩情報提供WEBサイト「出産なび」
厚生労働省では「出産費用の見える化(以降、見える化)」の目的を、①費用の透明性向上 ②サービスの質向上 ③選択肢の拡充 と謳ってきました。この背景には、昨今の物価高による出産対応施設での経費等の高騰、人件費の増加に加え、出産に関わる費用の地域格差の拡大が挙げられます。
見える化への動きは、2023年度の子ども家庭庁の創設、出産育児一時金の増額といった国の対応を評価して次につなぐための「出産育児一時金の見直しを踏まえた出産費用の分析並びに産科医療機関等の適切な選択に資する情報提供の実施及び効果検証のための研究」のスタートに始まります。この研究チーム(田倉班)は、医療経済の研究者や、医療関係者等で構成され、施設の特徴を示すための指標を検討してきました。
その結果、今回の「出産なび」には「助産ケア」という項が設けられ、助産師外来、院内助産、母乳ケア、産後ケアの有無など、主として助産師が関わるケア提供システムに加え、アドバンス助産師の数も指標に入りました。
女性たちへ質の高い助産ケアを提供する体制を守るため、今後の動きに注目するとともに助産師も専門職としての自覚を持って自己研鑽を続けましょう。