アドバンス助産師Vol.14

2024.02.15

  • 【特集:第8次医療計画の周産期医療計画とアドバンス助産師の役割】
    今求められる地域に根ざした助産師の活動

    周産期医療の集約化・重点化に向けてタスク・シフト/シェアが促進されます。助産師の専門性の積極的な活用が期待されるなか、開業助産師として東京都助産師定着促進事業に参加し、助産実践能力の強化に取り組んでいます。

つむぎ助産所 アドバンス助産師

渡辺 愛

 東京都練馬区で約25年間、一貫して地域の助産師活動を続けております。この間、分娩を取り扱っていた産院が次々閉院し、妊婦さんたちは少し遠方の産院や大学病院、総合病院などに足を伸ばして出産するようになりました。少ない産科医療機関に妊婦さんが集中するため健診の待ち時間が長く、上の子どもを連れて受診などとてもできません。セミオープンを担う地域の産婦人科クリニックは増えても、婦人科診療の利用者で混雑するため、結局出産する産院で健診を受けます。入院中は助産師が忙しそうと授乳や育児、身体の悩みや不調を抱えたまま地域に戻ってきます。地域の助産所による産後ケアの需要は高まるばかりです。

 

 当院は2022年から「東京都助産師定着促進事業」に参加し、地域周産期医療センターである順天堂大学医学部附属練馬病院の助産師が、2か月間つむぎ助産所に出向し、妊婦健診・分娩・産後ケア・外来での乳房ケアや訪問など実施くださいます。

 助産所の健診は妊婦さん一人ひとりとゆったり会話し、手と目を使って妊婦の腹部や全身に触れ、不安な思いや背景を知って、生活に即したアドバイスをします。分娩は一人の産婦につきっきりで、表情や訴え、発汗、痛みの変化で分娩進行を把握します。分娩直後から行うきめ細やかな授乳支援で母乳育児は容易に軌道に乗ります。医療機関で分娩した産後1年くらいまでの母子が、授乳や育児の不安や困りごとを抱えて常に来所するため、多様な外来ケアが求められます。乳腺炎の急性期や回復期のケアにもコツがあり、地域の医療機関への繋ぎ方も学びます。訪問は家庭の事情に応じた授乳や沐浴、内風呂、抱っこひもの使い方など幅広い生活への支援が求められます。

 

 周産期医療の集約化・重点化で助産師へのタスク・シフト/シェアが促進されるとのこと。周産期医療の専門知識と技術に加え、母子の生活に即した支援を助産所で経験することで、個別性も重視した助産師のケアが提供されることを期待します。

地域周産期医療センターから出向し、ケアを実施する助産師(アドバンス助産師)

地域周産期医療センターから出向し、ケアを実施する助産師(アドバンス助産師)

『1%の風景』 助産所や自宅での出産を選択した女性と、彼女たちをサポートする助産師の姿を記録したドキュメンタリー。つむぎ助産所が舞台の一つになっています。

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