Vol.15
2024.07.10
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周産期医療を巡る大きな環境の変革に共に対応しよう。
周産期医療を巡る環境の変革がいかなるものであろうと、質・安全が担保された医療・ケアを、持続可能な形で提供する。「共に対応しよう」という呼びかけに、アドバンス助産師への期待が込められています。

公益社団法人日本母性衛生学会 理事長
正岡 直樹
2023年の出生数は72万7277人で過去最少、死亡数は157万5936人で過去最多。結果我が国人口の自然増減数は-84万8659人で過去最大の減少幅となりました。我が国では少子化と高齢化が同時に進行しており、「社会保障制度の存続」や「医療・介護サービスの基盤」が崩壊の危機にあると言えます。
2024年、我々の働き方は大きな転換点を迎えました。医師の働き方改革の主眼は、医師の勤務環境を根本から改善し、質・安全が担保された医療を持続可能な形で患者に提供すると共に医師自身の健康・生活の質も向上させることにあります。
しかしながら、産科医不足は以前からの課題であり、さらに夜間や休日のオンコール、緊急手術など時間外にも対応せざるを得ないこともあります。時間外勤務とその制限が明示された今、これから様々な課題が浮き彫りになってくるはずですが、産科医療のタスク・シフト/シェアにおけるアドバンス助産師の役割の重要性についてはここで敢えて語るまでもありません。
一方、最近話題となっていることに少子化対策の一環として政府が検討している「分娩費用の保険適応案」、「分娩費用の自己負担なし」があります。全国一律の価格とすることでサービスの質の確保、安心して産み続けられる制度作りが目的と考えられます。現在は正常分娩の費用は医療機関が自由に設定しており、全国平均は約50万3000円ですが、地域差の大きいことがわかりました。これは施設の充実度、人件費、医療機器、医薬品、各種サービス料金などがその背景にあります。低い分娩費に設定されると人員削減、サービスの低下、ひいては閉院さえ余儀なくされる可能性もあります。
実際には保険が適用される部分、その他の公費で補填される部分、そして個々の希望として自己負担となる部分の設計がどの様になるか、社会全体で妊娠、分娩、子育てを支えるための国の覚悟が問われています。