アドバンス助産師Vol.12

2023.03.30

  • 【特集:アドバンス助産師の働き方のこれから】
    変化の中にこそ確かな専門性を

    助産師がその専門性を発揮し、そして多様なニーズに合わせて地域でも活動していくためにはどうしたらよいか、助産師全体で考え改革していくことが必要です。

上智大学 准教授 佐山 理絵

 日本における少子化はますます進展しているなか、分娩を取り扱う医療機関は減少しており、平成8年には3991施設だったが令和2年には約半数の2070施設となっています。産婦人科医師数は増加傾向にありますが、全国には産婦人科医不在の周産期医療圏もあり、安全な周産期医療体制の構築における課題となっています。

 また、令和3年5月に公布され、令和6年4月1日に向け段階的に施行される「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等一部を改正する法律」をうけ、いよいよ医師の働き方改革が本格的に実行されます。医師は労働基準法に定められている時間外労働の上限規制の適用外でしたが、令和6年4月以降、原則年間960時間・月100時間未満の規制の対象となります(例外あり)。

 医師不足や分娩施設の減少、医師の時間外労働の上限規制といった背景がある中で、妊婦の多様なニーズに応え地域における安全・安心・快適な出産の場を確保するためにも、これまで以上に助産師が本来の機能である正常産を取り扱う役割を担うことで産科医師の負担を軽減することに繋がるとされ、「助産師の専門性の積極的な活用」による、タスク ・シフト/シェアが推進されています。

 

 そうした医療機関等での助産師の専門性の発揮と合わせ、多くの助産師が施設以外のあらゆる場(地域)で女性の生涯を支援・ケア提供しています。小・中・高等学校、大学に出向き「命の教育」を実施したり、企業の健康教育に参画したり、産後の母親に精神科訪問看護を行ったりとその活動は、妊産婦や家族の多様化に合わせて多岐にわたっています。

 しかし、医療機関に勤務する助産師が地域で活動するためには所属医療機関へ兼業届を提出する必要がありますが、就労規定で副業が禁止され施設外で活動できない等の声も聞かれます。助産師がその専門性を発揮し、そして多様なニーズに合わせて地域でも活動していくためにはどうしたらよいか、助産師全体で考え改革していくことが必要です。

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