Vol.12
2023.03.30
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【特集:アドバンス助産師の働き方のこれから】
変化の中にこそ確かな専門性を~母子のための地域包括ケア病棟体制への取り組み~助産師が妊娠中から関わり、妊婦さん自身が「産み育てる力」を身につけることで、分娩・育児に前向きに臨んでほしい、助産師は助産実践能力を向上しつつ、本来の力を発揮したいという強い思いが、院内助産に込められています。
公立学校共済組合 中国中央病院 看護部 看護部長 喜多村 道代
当院では2013年産科集約化の影響を受けて分娩件数が急増し、帝王切開率が42.3%になったことを機に、助産師外来を開始しました。助産師が妊娠中から関わり、妊婦さん自身が「産み育てる力」を身につけることで、分娩・育児に前向きに臨んでほしい、助産師は助産実践能力を向上しつつ、本来の力を発揮したいという強い思いがありました。
2019年日本看護協会「母子のための地域包括ケア病棟(仮称)モデル事業」への参加を機に「院内助産」について検討を始めました。
当院は、一般急性期病院で産科病棟は婦人科と消化器内科の男性を含む混合病棟(病床数44床)です。分娩室・新生児室を含む産科10床をユニット化し、分娩は妊娠35週以降を対象としています。「院内助産」を始めようにも男性のいる混合病棟のどこで誰ができるのか、当初は不安でいっぱいでした。
まずは産科医師と助産師全員が「院内助産・助産師外来ガイドライン2018」を読み合わせ、共通認識を持つことから始めました。
ガイドラインには「院内助産とは緊急時の対応が可能な医療機関において、助産師が妊産褥婦とその家族の意向を尊重しながら、妊娠から産褥 1か月頃まで、正常・異常の判断を行い、助産ケアを提供する体制をいう」とあります。
経験を積むほどお産のリスクを知り「医師がいないお産なんて無理」と、「院内助産=医師不在のお産」と考えていました。しかし「緊急時の対応が可能な体制」を整えるために医師をコールしてもよいこと、特別な部屋や設備は必要ないことなど、一つ一つ不安や疑問に答えながら共有していきました。
妊娠中から分娩・産後健診まで提供しているケアを振り返ることで、現在の体制のままで「院内助産」であると認識できました。医師と助産師の意識を統一できたことで、院内の会議でもスムーズに承認を得ることができました。妊産婦さんに対しては、院内助産について外来やホームページへの掲示、文書を配布し、当院で提供しているケアを発信しています。
2021年度の帝王切開率は27.4%になりました。助産師が本来の力を発揮し、妊産婦に寄り添う「院内助産」が少子化問題解決の一助になると嬉しいです。