アドバンス助産師Vol.13

2023.08.28

  • 世界に誇る周産期医療体制を維持するために

    今後も、アドバンス助産師の皆様とともに産科医療の質の向上、安全安心な、そして妊産婦にも満足がいく、周産期医療を提供していきたいと思います。

公益社団法人 日本産婦人科医会 会長

石渡 勇

 我が国の少子化には歯止めがかかりません。2000年から2015年までは年率で1%減、2016からは3%、そして、新型コロナの流行もあり昨年は5%を超えました。出生数の減少が猛烈なスピードで加速されています。人口減少は経済の衰退を象徴し、社会保障の持続可能性を危うくします。国はこれまで出生数の減少を座視していたわけではありません。出生数の減少(数字のショック)への政治的反応がありました。1991年の特殊出生率1.57ショックで時の村山内閣は「エンゼルプラン」を、2005年に出生数が死亡数を下回った(人口減少ショック)時の小泉内閣は「新しい少子化対策」を、2016年の出生数が100万を割ったときの安倍内閣は「ニッポン一億層活躍プラン」を、2022年出生数が80万を割ったときの岸田内閣は「次元の異なる少子化対策」をスローガンに打ち出しました。国は少子化対策を国策のトップにあげました。

 

 しかし、この少子化を止め反転させるのは容易ではありません。財源も乏しいなか、成育基本法のもと、こども家庭庁も4月に始動しました。国は「分娩費用等の保険化」を計画しています。保険化により経済的負担が軽減されるのか、世界トップの周産期医療・妊産婦にとっても安全で安心な医療提供が維持できるのか、妊婦の望む出産場所が確保できるのか、妊産婦の多様なニーズに対応してきた体制が維持できるのか、少子化が進む中で失敗は許されません。国には、これらの課題に特段の配慮をお願いするとともに、私たちは専門職能団体として議論に参画していきたいと思います。

 

 国は、妊娠期からの切れ目のない支援の拡充~伴走型支援と産前・産後ケアの重要性を政策に打ち出しています。今後、ますます、アドバンス助産師・助産師等との連携と協調が、タスクシェア等が重要になると思います。

 

 世界トップの周産期医療に携わる私たちの役割は何か、何ができるのか。

 こども家庭庁内に様々なプロジェクトが設置されます。私たちは専門職能団体として参与していきます。今後も、アドバンス助産師の皆様とともに産科医療の質の向上、安全安心な、そして妊産婦にも満足がいく、周産期医療を提供していきたいと思います。

よく読まれている記事