Vol.13
2023.08.28
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助産師教育における助産政策に関する学習方針、到達目標の設定について
助産師の役割を遂行するためには、現行の制度や政策を理解し、対象の声を届けながら、よりよい体制整備につなげる助産政策に関する力が必要です。
公益社団法人 全国助産師教育協議会 教育検討委員会担当理事
蛎﨑 奈津子
コロナ禍の社会は少子化を加速させ、雇用や生活面での女性の深刻な現状を顕在化させました。助産師はこれまで以上に安心・安全な妊娠・子育ての実現への支援とともに、様々なライフサイクルにある対象の性と健康を支える役割が期待されています。このような役割を遂行するためには、現行の制度や政策を理解し、対象の声を届けながら、よりよい体制整備につなげる助産政策に関する力が必要です。
全国助産師教育協議会では、2020年6月に「望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラム2020年版」を公表しました。今後の社会情勢を見据え、助産師の基礎教育として求められる教育内容を明示しました。2023年6月には、これらの教育内容を2年間の修業期間で実施するカリキュラムモデルを作成しました。『助産政策論』は「望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラム2020年版」内の「助産に関連した医療政策」3項目に基づく科目として、1単位(15時間)として設定しました。
『助産政策論』の学習目標(科目の概要)は「助産ケアが医療政策に反映されるプロセスとその意義を知り、助産ケアを医療政策に反映させるための方法を学ぶ」としています。到達目標は12項目とし、本科目のねらいとなる「政策立案の原理を理解できる」「政策立案の実際を知る」「政策の展開について理解できる」に対応しています。
助産政策に関する科目は、現行の保健師助産師看護師学校養成所指定規則には含まれていない新しい科目として見出されました。全国助産師教育協議会では、助産政策に関する科目が新たな教育内容であることをふまえ、日本助産学会の協力を得て、教員を対象とする研修会の開催や活用可能な教材作成など、助産政策に関する教育の推進に向けた取り組みを予定しています。
「助産政策論」(『望ましい助産師教育におけるコア・カリキュラム2020年版』より)
学習目標
助産ケアが医療政策に反映されるプロセスとその意義を知り、助産ケアを医療政策に反映させるための方法を学ぶ
到達目標
- 1
看護職に関わる法律が説明できる。
- 2
現在の保健・医療・福祉政策が概説できる。
- 3
助産に関連した医療政策の変遷が説明できる。
- 4
助産に政策が必要な理由が説明できる。
- 5
政策が社会を動かす一つの手段であることが説明できる。
- 6
多職種との審議会・検討会等での発言を行う意義が説明できる。
- 7
市民の声を反映した政策提案の実際が説明できる。
- 8
政策提案のためのデータの必要性が説明できる。
- 9
医療政策の立案プロセスが説明できる。
- 10
インセンティブ(政策誘導)が説明できる。
- 11
政策の展開の実施が説明できる。
- 12
政策に関するデータ収集により政策の評価が実施できる。